認可保育園には面積や広さ、職員の人員配置など、その設置に関してさまざまな基準があります。一方、その利用に関しても一定の条件があります。このコラムでは認可保育園に関わる基準や利用の条件を見ていくことによって、保育士にとって、利用者にとって認可保育園がどのような保育園なのかみていきます。
spass/shutterstock.com
認可保育園の運営に関わる基準
認可保育園にはさまざまな基準があります。その基準を見ていくことによって、どのような保育園なのかを見ていきます。
国が定める基準を満たしている認可保育園
認可保育園は設置や運営に関してまず国の定める基準を満たしています。それが「児童福祉施設の設置と運営に関する基準」という基準です。
児童福祉施設である保育所は、保育の質を一定以上に保つために最低でもここまでの設備、運営を満たさなければならないという基準があります。この基準の保育所の項目には、職員の人員配置や施設の広さ、保育所内にあるべき設備などが決められており、こうした基準を一つひとつ満たしていかなければ認可保育園として認められません。
自治体が定める基準も満たしている認可保育園
保育所の認可は国が出すのではなく、都道府県や、人口50万人以上の政令指定都市、人口30万人以上の中核市が、この認可を判断します。
こうした自治体は上述の基準の範囲内で、独自に認可を出すための基準を条例で定めることができるため、認可保育園として運営していくためには国の基準に加えて、自治体の基準も満たしている必要があります。
こうした基準があるのは自治体の実情に合わせた保育園を運営してもらうためであり、基準を厳しくすることは認可保育園の質を上げることに関わってきます。
基準の詳細
では、具体的に認可保育園はどのような基準を満たしているのでしょうか。「児童福祉施設の設置と運営に関する基準」からその基準の一部についてみていきます。
設備
認可保育園に必要な設備は預かる年齢によって変わることがあります。
満二歳以上の子どもを預かる場合には保育室、遊戯室、屋外遊戯場(園庭)、調理室、便所が園の設備として必要です。
二歳に満たない子どもを預かる場合にはこれに加えて、乳児室、ほふく室、医務室も設置しなければなりません。
公園など子どもが外で遊べる環境が近くにある場合などは園庭が必要ない、満三歳以上の保育に関しては給食を外部委託することで調理室を設置しなくていい、などの例外もあります。
広さ、面積
預かる子ども1人あたりに必要な面積が決まっており、保育室の場合だと満二歳以上の子ども1人あたり1.98平方メートルが必要です。同様に園庭に関しては、1人あたり3.3平方メートルが必要です。預かる子どもの年齢や定員との兼ね合いで認可保育園に必要な敷地面積は変わってきます。
職員配置基準
職員の配置にも規定があります。
基本的に認可保育園に必要なのは職員は保育士、嘱託医、調理員です。
自園調理で献立を考える場合は栄養士を雇うなどして献立の作成やチェックをしなければなりません。
配置基準とよばれる、必要な保育士の人数の基準もあり、例えば、0歳児3人に対して保育士が1人必要である一方、4歳以上児30人に対して保育士が1人必要なように、年齢ごとに配置する人数も変わります。
この配置基準にはいくつかの特例があり、その一つが乳児4人以上を預かる場合であれば看護師、保健師、准看護士を1人に限って保育士とみなして配置できるというもの。医療的視点をもって保育に関わってもらおうと、園が看護師等の求人を出している場合もあります。
出典:保育所等における准看護師の配置に係る特例について(通知)
/厚生労働省
利用者の立場から見た認可保育園
MIA Studio/shutterstock.com
ここからは利用者の視点から認可保育園を見ていきましょう。子どもを預ける保護者にとって認可保育園はどのような園なのでしょうか。入園の基準、保育料、保育の質の観点から解説していきます。
入園には基準、条件のある認可保育園
認可保育園には入園に条件があります。両親が共働きで日中いない、保護者が親の介護をしている、保護者が病気の療養中であるなど、保育を必要とする理由があるのが原則です。
認可保育園の申し込み方法も、園に直接応募するのではなく、自治体に申請を出すという特徴もあります。
自治体ごとに保育の必要性に応じて加点する点数があり、加点の多い家庭から順に認可保育所の希望を通すようになっているようです。加点する点数は自治体ごとに異なり、一部の自治体では、保育所で預かる人数を増やすために親が保育士で復職の意思がある場合には点数を増やすなどの取り組みをしています。例えば、八王子市では保育士として復職、または採用が内定している場合には、2点の点数が加算されるようです。
出典:子ども・子育て支援新制度なるほどBOOK平成28年4月改訂版/内閣府
保育料は自治体ごとに異なる
保育料は自治体が決めています。同じ自治体内でも保育料は世帯の住民税の額によって保育料が異なります。
とはいうものの、自治体が保育料を自由に決めているわけではなく、保育料の負担を少なくするため、国が定めた上限内で自由に設定しているのです。そのため、自治体が変わるからといって大きくその保育料が変動するわけではありません。住民税の区分の設定の仕方によって保育料は変わります。例えば、横浜市では保育所等の保育料に関して、住民税額によって37段階の区分があるのに対し、八王子市では20段階の区分があります。
また、同じ自治体内で、同様の区分の保育料の場合、園の使う教材費等で保育にかかる費用が多少変わることもあるようです。
運営が安定している園が多い
認可保育園は運営が安定している園が多いでしょう。
設置基準や配置基準が厳しく、設置や運営に費用がかかりそうな認可保育園ですが、認可保育園の運営は補助金がその多くを占めているため、その運営は安定している場合が多いといえるでしょう。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
在宅ワークで保育士資格を活かせる仕事とは?自宅でできる保育関係の仕事を徹底解説
通勤時間なく働ける在宅ワークをしたいと考えても「保育士は無理なんじゃないか……」とあきらめている方はいませんか?保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど、保育士の経験や資格を活かして自宅でで...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
さまざまな基準が関わる認可保育園
認可保育園には、設置、運営に関するさまざまな基準があることがわかりました。設備や職員の人数、面積などその基準は細かく定められており、自治体によってはさらに厳しい基準が設けられています。
利用者にとってもさまざまな基準があり、利用するのに保育の必要性に関する基準が設けられており、保育料も自治体が定める基準によって異なります。
保育士として働くにあたっては基準によって認可保育園がどのような特徴があるのか、保護者が利用するにあたっては認可保育園の利用にどのような基準が必要なのかを理解したうえで、認可保育園という保育施設を見ていきたいですね。