保育士試験の筆記試験に合格したら、次は実技試験ですね。実技試験3科目の中から、今回は保育中の一場面を絵で表現する試験「造形表現」について解説してみました。試験対策や、受験時に気をつけたいポイントなどについてまとめてあるので、造形を受ける際の参考にしてみてください。
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実技試験についておさらい
保育士試験の実技試験には、音楽表現、言語表現、造形表現の3科目があります。
実技試験の概要
音楽表現
音楽表現は、幼児に聞かせることを想定してピアノ・ギター・アコーディオンのいずれかを利用しながら、課題曲2曲を弾き歌いする試験です。課題曲の2曲は事前に発表されるため、試験当日までに練習することができます。また、楽譜の持ち込みも可能です。保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、音楽に関して総合的に豊かな表現ができることが求められます。
言語表現
言語表現は、3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定して、4つのお話から1つを選んで子どもが集中して聴けるようにお話を行う試験です。試験当日は、目の前に子どもが20名程度いることを想定して行われます。保育士として必要で基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができることが求められます。
造形表現
今回のトピックでもある造形表現は、保育の一場面を絵画で表現する試験です。制限時間は45分で、色鉛筆を使って絵を描きます。試験当日に問題文で設定された場面を、条件を満たしながら表現します。情景や人物を豊かにイメージした描写や色づかいなど、保育士として必要な造形表現ができることが求められます。
実技科目の中で造形の試験のみ、問題を知るのが当日となるため、他の2科目と比べて練習時間が多くなることが見込まれます。また、道具をそろえる必要があるので、費用的負担もかかることは頭に入れておきましょう。
造形の試験対策をしよう
造形の試験対策をするには、具体的にはどんなことをすればよいのでしょうか。
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道具をそろえる
まずは、試験でも実際に使う色鉛筆をそろえるところから始めましょう。色数の指定は12~24色程度となっており、そのぐらいの色数であれば、25色であっても問題ありません。メーカーなどは特に指定はないので、好きな色鉛筆を使えるようです。同じ色鉛筆とは言っても、ものによって描き心地が異なります。
例えば、芯が太めのものであれば、広い面に楽に早く塗りつぶすことができますよね。造形の試験では、解答用紙の全てを色鉛筆で塗りつぶす必要があるので、そういったタイプもひとつのおすすめと言えるでしょう。発色が良いタイプも、重ねて色を塗る時間を節約できるので、造形試験用として好ましいかもしれません。
また、例年、解答用紙にはケント紙が使われているようなので、本番と同じケント紙を練習の時点から使いましょう。ケント紙とは、比較的厚みがあり、固く締まった感じのある紙です。試験本番で道具や材質の違いに戸惑って時間を無駄に使ってしまわないように、本番さながらの気持ちで練習しましょう。ケント紙は文房具屋さんや大手通販でも取り扱っています。
汎用性の高いパターンを練習
造形の試験では、保育士と子どもの描写は必須です。保育の一場面を描くとなると、ある程度の人数を描くことになり、時間もかかるでしょう。時間を少しでもかけないために、登場人物の髪型や服の色を統一してしまいましょう。例えば、保育士さんの髪型はショートで、エプロンはピンクでズボンは青、といった具合に、見た目を定番化してしまいます。
そうするこで、毎回色の塗り方やバランスに迷うことなく、絵を描くことができます。同じように子どもたちも性別や服装もパターン化することで、背景などの構成を考える時間にあてることができるでしょう。
過去問と予想問題をひたすら練習
造形の試験では、保育中の一場面を切り取って絵に描くことが課題になります。それを紐解くと、「朝園児たちが登園してくるところから帰るまでの場面」が出題される、というように読み取ることもできますね。
過去問で出題された、お遊戯会の練習といった普段の保育の様子がテーマになることもあれば、お年寄りと伝承遊びを楽しむといったイベント時の風景が出題されることもあります。したがって、その両方の出題の可能性があると考えて練習に臨みましょう。
例えば日常保育の風景なら、保育室内でのエプロンシアター、ペープサートを使った劇を子どもたちに見せる様子などを練習してみるのもよいでしょう。イベントの風景であれば、園庭で行う夏祭りや、運動会の様子を描いてみるのもよい練習になりそうですね。他にも、保育中のいろいろな場面を想定して描いてみましょう。
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受験時に気をつけたいポイント
造形試験を受けるときに、見直したいポイントについてピックアップしてみました。
時間配分に気をつける
造形の試験は制限時45分間です。これは、問題文を読む時間も含まれます。そのため、問題文を読む時間と構成を考える時間を5分ぐらいに抑え、残りの約40分を絵を描く時間に充てられるようにしましょう。その40分のうち、前半20分で考えた構成を基に下絵を描き、後半の20分を使って着色する、というのを目安に描いてみます。
練習している間に自分なりの時間配分のパターンができてくると思うので、慣れないうちは上の時間配分を目安にして、慣れてきたら自分のやり方で取り組んでみてくださいね。
問題文や条件をよく確認!
事例や条件をしっかり確認するのも大事なポイントです。あたりまえのようにも見えますが、ここで事例の解釈を間違ってしまうと、途中で後戻りできなくなってしまう可能性も。例えば、異年齢児保育のお店屋さんごっこがテーマになったとしましょう。事例の文章で、5歳児が店員さん役、3歳児がお客さん役でいっしょにごっこ遊びを楽しむという内容の場合。
もし焦って5歳児と3歳児と立場を誤って解釈してしまうと、提示された条件と異なり、大きな減点につながりかねません。常識の範囲内で考えれば間違えにくいところではありますが、試験当日の緊張感で解釈を間違えないよう、落ち着いてしっかり事例を読みましょう。
最後ではなく、「途中」で見直しを
最後の見直しも大切ですが、試験の途中で見直しをすることを心がけてみてください。なぜなら造形の場合、最後の見直しで間違いや不足に気づいても、直す時間が足りなくなってしまうからです。
そのため、特に下書きが終わった時点で、人数などの条件が満たされているか、背景の描写が客観的に見てはっきりわかるようになっているか、落ち葉遊びや誕生日会などの様子を表す描写がされているかなど、条件が満たされているかしっかり確認するようにしましょう。
子ども全員が異なるポーズか
保育中の楽しい様子を表現する造形の試験。実際の保育中に子どもたちの動きが一人ひとり違うように、描写する子どものポーズも違う方が好ましいでしょう。平均で子どもはおおよそ3人を描く必要がある=3パターンのポーズの描写が必要になる、ということでもあります。例えば、園庭の水たまりで遊ぶ様子のテーマで想定してみましょう。
1人は保育士といっしょに遊ぶ様子、残りの2人は子ども同士でいっしょに遊ぶ様子、というようにすれば、3人のポーズはおおまかですが決めることができます。造形の試験突破を目指して、細かい描写にも気を配って表現してみましょう。
造形の難易度は?
3つの科目から2つを選んで受ける実技試験。最初の段階で「どれを選んだら合格しやすいのか?」と科目の選び方に悩む方もいるでしょう。ただ、その答えは人それぞれというのが正しいかもしれません。
実際に実技試験に臨む方を見ると、「ピアノが弾けないから音楽は避ける」という消去法や「絵が得意だから造形にしよう」といったように、自分の得意なものを選んでいる方が多いようです。そのため、一般的な難易度で受かりやすいものを選ぶというよりも、自分にとってやりやすいものを選ぶのがよさそうですね。
ただ、唯一造形だけが当日に問題を知ることができるので、練習しづらいという点については難しさがあると言えます。1回の試験時間も、他2科目が5分ほどなのに対し、造形は45分と長いです。もし受験科目に迷った際は、その点も考慮するとよいでしょう。
造形科目の合格を目指そう
保育士試験の実技試験科目「造形」について、対策の方法や難易度などについて解説しました。造形は実際の試験時間はもちろんのこと、練習に費やす時間もまた多い上に、採点基準がわかりにくい試験でもあります。実技試験全体の合格率を見ると例年8割以上と、筆記試験よりも一気に高くなります。事前準備や練習を重ねて試験の合格を目指していきましょう。