「保育士はやりがいのある仕事」とはいっても仕事をするうえで不満はつきもの。時には「辞めたい」と思うような職場や出来事にあうこともあることでしょう。やりがいのある仕事ではありますが、給与がやすかったり、責任が重かったりと悩みを抱えることも多いかもしれません。保育士を辞めたいと思ったときの対処法をまとめました。
このコラムでは保育士さんが辞めたいと思う理由、その対処法、辞める時に心がけたいことをまとめました。
保育士が辞めたいと思う理由…データから見る保育士さんの本音
保育士さんが園を辞めたい、と思う理由には何があるのでしょうか?ここでは2つのアンケート調査をもとに保育士さんが辞めたいと思う理由を紹介します。
アンケート調査から見る保育士辞めたいと思う理由
まずは、東京都が2014年に実施した調査を見てみましょう。
調査対象者のうち、保育士を辞めて、それ以外の職種で働こうと考えている人の割合が16.0%、辞めた後は働かないと考えている方は2.1%。約2割の保育士さんが何らかの理由で保育現場を離れることを考えていました。辞めようと考えている理由については、給与が安い(65.1%)、仕事量が多い(52.2%)の2つが上位を占めています。
参照:東京都保育士実態調査
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2014/04/DATA/60o4s201.pdf
また、「保育士就活バンク!」が2017年に保育士に対して実施したアンケート調査によると、実際に「辞めた」経験のある保育士さんが多いことがわかります。「新卒で入った保育園に現在でも勤めていますか?」という質問に「いいえ」と答えたのは77.3%。アンケートに回答した8割に近い保育士さんが辞めた経験があるということがわかります。
最初の園を辞めた理由で多かったのは、人間関係(30.2%)、結婚・出産(29.4%)、残業が多い(23.0%)、などでした。
結婚・出産という人生の大きなイベントに合わせて退職した方が多い一方で、人間関係や残業の多さ、など職場環境や業務上の不満が辞めたい大きな理由になっているようです。
参照:保育士就活バンク!
https://hoikushi-syusyoku.com/column/post_1197
なんで辞めたいと思ってしまうのか?…主な理由を解説
給与が安い
給与が安いというのが辞めたい理由の一つです。働く上で日々の生活に直結する給与は保育士にとっても大きな問題。保育士の給与は国や地方自治体の待遇改善によって全体としては改善傾向にあるものの、同様の国家資格である看護師や薬剤師と比較した際に給与が低かったり、仕事量や責任の重さの割には給与が低い、と思う方も多く、全体として保育士の給与は低く感じてしまうようです。
仕事量が多い・残業が多い
仕事量や残業が多いのも保育士のつらい点です。動きが大きく、まだ運動機能の発達していない子どもを保育するのには体力がいります。同時にけがや病気にかかっていないかなど、気をつかう仕事です。
くわえて、保育士の仕事は日中の保育だけではありません。長期・短期の保育計画作成や子どもの連絡帳への記帳、壁面の飾りつけ、行事の準備などその事務作業は多岐にわたります。子どもが帰ってからも一定時間はこうした事務作業があり、全体として仕事量が多くなってしまいがちです。
行事の準備や壁面製作は持ち帰り残業となることも多くサービス残業を発生する原因にもなっています。保育園の中には、書類作成を手書きからパソコンに変えたりして残業を減らしている園もありますが、業界全体としてはまだまだ業務量は多い傾向にあります。
人間関係の難しさ
保育士は約9割が女性という、女性の多い職業です。男性保育士も増えているとはいえ、職場にいる多くの保育士は女性です。女性の多い職場では、問題や不満があった場合直接言うのではなく、気を遣い合いながら円満に解決する場合が多いようです。
特に新人の頃は業務に手一杯だったり、知らないことも多くこうした「空気を読む」対応が難しいこともあるかもしれません。その結果、人間関係が複雑になってしまうこともあるでしょう。
園長や上司も園の雰囲気に大きく影響します。入った園がもとから関係がギスギスしていたり、上司が高圧的な態度をとってくるなど職場の人間関係がストレスとなり、職場の雰囲気が悪くなることもあります。
辞めても大丈夫?…保育士の現状を正しく理解!
「どうしても我慢できない、辞めたい!」と思った時に、「辞めるという選択肢」で悩む人も多いのではないでしょうか?結論からいうと「辞めても問題はありません」。仕事や園の現状に悩み、体調を崩してしまったり、保育という仕事自体を嫌いになってしまうぐらいなら、一度現在の園と距離を取ることは、ご自身を守るためにも当然のことといえます。
また、進退を考える際には、保育業界の現状にも目を向けてみるとよいでしょう。
待機児童問題と保育士の高い需要
今の園を辞めても問題はない、という最大の理由は、現在の保育業界が圧倒的な保育士不足であり、転職先を見つけるのには困らないという状況があるからです。この大きな原因は都市部を中心とした待機児童問題です。
2018年4月時点で待機児童は1万9895人。これは前年に比べると6186人減っていますが依然として多くの子どもが保育所を利用できていません。待機児童を解消するために、小規模保育の拡大や新規保育園の設置、幼稚園の認定こども園への移行などさまざまな取り組みを通して保育の受け入れを拡大しています。
ですが、現場の保育士の人数がまだ追いついておらず保育施設や自治体が保育士確保のために給与を上げたり、家賃補助を充実させたり、費用がかかったとして保育士に働いてほしいと感じる取り組みをしています。現在は保育士の需要が高く、一度辞めても復職しやすい状況のため、今の職場を離れても、保育士として働く場所に困るということは少ないでしょう。
児童福祉関係全般に幅広く就職できる保育士
保育士が転職できるのは、保育園だけではありません。国家資格としての保育士は児童福祉関係で幅広く仕事を見つけやすい職業です。例えば、親が病気になったり、事故で無くなってしまった子どもが集団生活する児童養護施設や小学生を預かる放課後児童クラブ、障害児の療育を担当する児童発達支援センターなど、子ども関係の仕事にも多種多様な分野があり、保育士はその専門性を活かして働くことができます。
保育園だけでなく、その子どもに関する専門性を活かして働くことができるのが保育士というお仕事。保育園を退職しても、さまざまな選択肢があるといえます。
他業種を経験してみるのも選択肢の一つ
保育から一度離れて他業種を経験することも選択肢の一つです。「保育の職場しか知らないから保育士しかできないのでは」と考える方もいるでしょう。ですが、一度保育園から離れて、他業種の仕事を経験することで自分の新たな適正を見つけられることもありますし、離れたことで保育の仕事の魅力を再発見することもあります。また、保育士の業務中に身に着けた事務処理能力やコミュニケーション能力なども活かせるものがあるでしょう。
もちろん保育に戻ってくるのも選択肢の一つです。数年後には待遇改善や勤務条件の改善が進んでいることが予想されます。復職も視野に入れたうえで他業種へ飛び込んでみてみいいかもしれません。
地域や施設を変えて給与アップも
給与や待遇に不満を持っている方は少し視野を広げて転職活動をしてみると給与アップで不満が解決するかもしれません。
近年、都市部では保育士の処遇改善に取り組んでいる自治体が増えています。地域によっても保育需要や保育士の待遇改善に関して温度差はあるもの。都市部では「宿舎借り上げ制度」といって高い家賃負担を自治体と施設側が負担して実質タダで賃貸物件を利用できる制度もあります。近隣自治体でもこうした制度があるかないかは異なるので、視野を広げて転職活動することで待遇に関する不満は解消するかもしれませんよ。
視野を広げて考えることが大切!
これまで見てきたように、保育園も子どもと関わる手段も、決して今いる園だけが全てではありません。他業種を含めて保育士さんにはさまざまな選択肢があります。今いる園に不満があるから、といって保育自体を嫌いになってしまうのは非常にもったいないことです。
違う保育園に勤める、保育園以外の施設に勤務してみる、保育から離れてみる、など一度「辞めて」解決することも大いにあります。「辞めたい」現状がすべてではなく、視野を広げて自身の仕事を見つめなおすことで解決策が見つかるかもしれませんね。
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園を辞める際のポイント
辞めると決意しても、円満に退職するためには最低限のマナーや適切なタイミングがあります。ここでは、簡単に退職の方法について解説します。
退職の意思を伝えるタイミング
退職の意思は上司である主任や園長に最低でも1か月前には伝えましょう。保育士が1人退職するということは、園にとっては人手が1人分足りなくなるということ。臨時で保育士を募集したり、中途・新卒採用の求人を募集しなければなりません。職場とのトラブルを防ぐためにも余裕をもって退職の意向を伝えるようにしましょう。
年度の切り替わりが近くなった12月~2月ごろに退職の意向を伝え、3月末に退職する流れですと、園児も入れ替わるということで園側にとってはタイミングがいいといえます。
やむにやまれない事情がある場合は例外ですが、円満退職に向けてタイミングは一つ重要なポイントだといえます。
引継ぎはしっかりと!
引継ぎはしっかりするようにしましょう。子どもにとって担任の保育士が変わるというのは大きな変化の一つです。今まで見てきた子どもの性格や子ども気になる行動や保護者との関係、など子どもがこれから心地よく園で過ごすためには一つひとつが大切な情報。次の担当となる保育士に責任をもって引継ぎをすることが大切です。
周囲への挨拶も忘れずに
園を退職する当たっては、先輩・同僚・後輩などへの挨拶も忘れないようにしましょう。引継ぎだけでなく今まで働いてきた保育士がいなくなり、新しく園のことを知らない保育士が入ってくるのですから、残る保育士にとっても働く環境が変わるということです。事前に把握しておくことで同僚たちは心の準備ができますし、コミュニケーションをしっかりとることで円満な退職にもつながります。
「辞めたい」と感じても大丈夫
辞めたいと思う方の中には、自分を責めてしまう方もいるかもしれません。ですが、アンケート調査からもわかるように保育士の中にもさまざまな理由で辞めたいと思ったり、不満を持っている方はいるようです。
現在の職場の状況を改善できれば一番いいのですが、保育士一人で出来ることには限界があります。幸い現在の保育業界の状況を見ても、保育士の資格としての可能性を考えてみても、保育士には多様な選択肢があります。
やりがいのある保育を嫌いにならずに長く続けていくためにも、少し視野を広げて「辞める」という選択を肯定的に考えてみてもいいかもしれませんね。