5歳児クラスの担任は、子どもの様子を伝える「保育要録」を作成する必要があります。保育計画などとは異なり、小学校に提出するものであるため、どのように書くべきか悩む保育士さんも多いでしょう。今回は、保育要録とは何か、目的や様式、書き方を解説します。最終年度の重点や個人の重点など、項目別の例文もまとめました。
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保育要録とは
そもそも保育要録とはどのような書類なのでしょうか。
保育要録の概要・しくみ
保育要録とは、年長児の成長過程や保育園での様子について記録したものを、子どもの育ちを支える資料として小学校に引き継ぐものです。
作成の対象は、翌年小学校に進学する最終年度の子どもであり、作成者はクラスの担当保育士さんとなっています。
入園してからの子どもの育ちや、最終年度、つまり5歳児の1年間での保育者のかかわりを書いていくもので、小学校の先生方と連携し、幼保小で切れ目のない指導を行うための重要な資料となります。
2018年度の改定による変更点
2018年度の保育所保育指針・幼稚園教育要領の改定により、保育要録の書式の変更や、10の姿の設定など変更が加えられました。
養護と教育に関する事項の一体化
養護と教育は別々ではなく一体的に行われるものであることをふまえて、記入欄が統合されることとなりました。
「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」の追加
保育所保育指針改定の大きな要となるのが、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の設定でしょう。
10の姿とも呼ばれるこの視点は、5歳児の終わりまでに育まれてほしい能力や態度のめやすを示したものであり、子どもの育ちを捉えるための手立てとなります。
この10の姿を参考にして、一人ひとりの発達や特徴を表現していくことで、小学校の先生方と子どもの姿を共有しやすくなるようです。
10の姿は到達すべき目標ではなく、あくまで成長のめやすであることをふまえ、子どもの状況を適切に把握していきましょう。
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保育要録の書き方
保育要録には、以下の2種類の書類に分けられます。
- 入所に関する記録
- 保育に関する記録
それぞれくわしい書き方を見ていきましょう。
入所に関する記録
入所に関する記録は、子どもの氏名や住所、保育園に通った期間など基本的な情報を記入する資料です。※厚生労働省の資料を参照
入所に関する記録には重要な個人情報を含むため、個人情報の保護に関する法律などをふまえて適切に取り扱うことが求められます。
作成にあたっては、個人情報の取り扱いや作成の方針などを、面談や懇談会などを通して保護者に周知しておくことが望ましいでしょう。
加えて、内容に関しても保護者の思いをふまえて作成できるよう、保護者との信頼関係を築いていくとよいですね。
保育に関する記録
保育に関する記録は、最終年度における保育の過程や子どもの育ちについて記入するものです。※厚生労働省の資料を参照
最終年度の重点
最終年度の重点には、5歳児の年度の始まりに、全体的な計画に基づいて長期の見通しとして設定したねらいを記入します。
これには、どのような保育計画を立て、保育士さんが子どもとかかわってきたかを、読み手である小学校の先生が把握するという役割があるようです。
個人の重点
個人の重点には、1年間を振り返って、子どもの指導について保育士さんが特に重視してきた点を記入します。
特にその子どもの特徴や性格を考慮してかかわった部分や、年間計画をふまえて子ども個人に特に意識して援助していたことなどを書けるとよさそうです。
保育の展開と子どもの育ち
ここでは、5領域の視点をもとに、子どもの発達の過程やめざましく成長した能力を記入しましょう。
また、小学校での指導に必要となりそうな配慮事項についても書くと、よい参考になりそうです。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」をふまえて、保育士さんが意識してきた援助の過程と、育ちがあらわれた子どもの姿をわかりやすく記入できるとよいですね。
最終年度に至るまでの育ちに関する事項
その子どもが園に入所したときから5歳児に至るまでの育ちに関して、特に重要と考えられることを記入する項目です。
5歳児クラスでの保育の過程とその子どもの姿を理解する上で大切となる、ポイントや印象的な姿を書くようにするとよさそうです。
1歳児クラスのときのあの姿が今の○○ちゃんの性格につながっている、3歳児のときは~ができなかったけど今は克服できた、など長期的な視点で発達を捉えるための一助となるよう工夫しましょう。
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保育要録の書き方のポイント
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保育要録を作成するときに意識したい、書き方のポイントをまとめました。
具体的でわかりやすい表現を心がける
保育要録を読んでもらうのは、子どものことをよく知っている保育士ではなく、小学校の先生方です。
そのため、子どもの保育園での姿が小学校の先生に伝わるよう、抽象的な表現は避けて具体的な言葉で書くことが大切です。
子どもの発達や特徴がイメージできるように、エピソードを記入するのもよいかもしれません。
子どもの様子をこまめに記録しておく
子どもの保育園での育ちを総ざらいして記入することが求められる保育要録では、日々の記録がとても大切な資料になるでしょう。
これまで作成してきた個人記録や連絡帳、保育日誌を参考にすると、そのときの子どもの様子を知ることができそうです。
また、写真や動画を見ながら振り返れば、場面や子どもの表情から、そのときのエピソードを思い出せるかもしれません。
保育要録の作成を見据えて、毎日一人ずつこの子を見ると決めて子どもの様子を観察しておくと記入に役立てられるでしょう。
客観的な視点で記入する
保育要録は小学校教育においての参考資料であり、成長の過程や状況を確認するためのものです。
誰が読んでも一定の捉え方ができるよう、個人的な感想や思いを交えず、客観的に記入することが重要になります。
また、個人情報保護の観点から、開示請求があれば保護者に保育要録を見せる必要があります。
その点もふまえ、過度にネガティブな表現や不必要に子どもの印象を下げるような記述はしないようにしましょう。
指導要録は子ども本人の小学校生活に直結するものなので、保護者の思いをふまえて作成することも大切になるでしょう。
出典:保育所保育指針の適用に際しての留意事項について/厚生労働省
保育要録の例文
最後に、保育要録の「保育に関する記録」の記入例文を見ていきましょう。
5歳児の女児を想定した例文を紹介します。
最終年度の重点
共通の目的を持って友だちと協同し、遊びや生活を充実させるよろこびを味わう。
ここには5歳児の年間計画をもとに、年度の始めに立てた見通しやねらいを記入します。
個人の重点
友だちと思いを伝え合いながら過ごし、自分なりに意欲を持って活動する。
その子どもに関して、保育士さんがどんな点を意識してかかわってきたかを書きます。
保育の展開と子どもの育ち
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- 進級当初は「年長さんだから」という思いから、苦手な野菜を頑張って食べようとしたり、支度を一番に終わらせようとしたりと意気込む姿が見られる。
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- 運動能力に自信があり、得意でない友だちに教えようとする姿があるものの、自分と同じようにできる子どもには張りあうこともあった。
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- 運動会のリレーでは、アンカーになりたいという思いから毎日園庭でリレー遊びを行う。
遊びでもアンカーにこだわって譲ろうとしないが、友だちの思いに気づけるよう促すと納得し、話し合いで決められるようになった。
- 運動会のリレーでは、アンカーになりたいという思いから毎日園庭でリレー遊びを行う。
- 生活発表会の劇では、友だちのせりふもすべて覚えて教えようとする。
一方でプレッシャーも強く感じており、「踊りが上手にできない」と涙を見せる場面もあったため、心できるようお手本役を頼んだり、練習期間を設けたりと繰り返し励ました。
5歳児の1年間における子どもの成長や、保育士さんのかかわりを記入します。
最終年度に至るまでの育ちに関する事項
- 2歳児クラスより入園。
- 入園当初は慣れない環境に戸惑い、保育者の側を離れようとしなかったが進級する頃には落ち着いて過ごせるようになった。
- 3歳児になり妹ができると、家庭ではお姉さんらしくふるまう一方で園では保育者に対する甘えが強くなることがあった。
入園から最終年度までの育ちで、その子どもを理解するのに役立つ情報を記入しましょう。
保育要録の書き方や例文を知って、小学校との連携に役立てよう
今回は、保育要録の目的や書き方をもとに、記入例文を紹介しました。
保育要録とは、5歳児の子どもの成長過程を記録し、子どもの育ちを支える資料として小学校に引き継ぐものです。
小学校の先生に子どもに姿を適切に伝えるためには、具体的な言葉やエピソードをもって、客観的な視点で記入することが大切となるでしょう。
書き方や記入例文を参考に、小学校教育の一つの支えとなるような保育要録を作成できるとよいですね。
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