保育所保育指針・幼稚園教育要領より示されている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。今回は、その一つ「言葉による伝え合い」について、遊びの実践事例とともに保育士の視点でまとめました。子どもたちは友だちや保育士さんとの関わりで言葉によるやり取りを習得していきますが、「言葉で伝えたい」という思いを育むために何ができるでしょうか。
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10の姿の一つ「言葉による伝え合い」とは
こども家庭庁・厚生労働省による「保育所保育指針解説」の資料では「言葉による伝え合い」とは以下のように示されています。
保育士等や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。
出典:保育所保育指針解説/こども家庭庁より抜粋
子どもたちは心を動かされるような体験を経て、「言葉で伝えたい」という思いを持つようになるでしょう。
また、自分の思いを聞いてもらう体験を重ねることで、相手の意見を聞き、自分の中で考えてから意見を言う、というやり取りができるようになるかもしれません。
保育士さんは子どもたちに言葉で伝える楽しさを教えると同時に、相手の話を聞くことの大切さを教えていくことが大切でしょう。
【年齢別】保育の中で「言葉による伝え合い」を実践した具体例
10の姿の一つ「言葉による伝え合い」を育む実践事例をもとに、子どもの育ちや保育士さんの援助のあり方を考えてみましょう。
2歳児
<活動内容:子どもの話に耳を傾ける>
2歳児クラスにはお喋りが大好きな子どもたちがたくさんいます。担任の保育士さんはどのように子どもの言葉を聞いているのでしょうか。 言葉で伝えあう力を育むためには、子ども自身が「自分の話をきちんと聞いてもらった経験」が必要なのかもしれません。
保護者や保育士さん、地域の大人が聞き役となることで、「話をちゃんと聞いてもらえた」「話していいんだ」という肯定感につながっていきそうですね。
3歳児
<活動内容:絵本の言葉に親しむ>
3歳児クラスでは、雪の日を題材にした絵本が人気のようです。 絵本を通して、さまざまな言葉や表現にふれていくことが、子どものいきいきとした表現につながっていくようです。
4歳児
<活動内容:自然教室で感じたこと>
年中クラスでは、初夏になるとバスに乗って自然教室へ出かけます。
行き先は車で1時間ほどの場所にある里山のコテージです。川遊びを楽しみ、現地の人に教わりながら飯ごう炊飯でカレーを作ります。
一日のスケジュールや川での注意点、カレーの作り方などを事前にクラスで話し合っていたので、子どもたちは自然教室に行けることをとても楽しみにしています。 子どもたちの言葉は、新鮮な体験によって生まれるでしょう。
子どもの溢れ出す気持ちから出てきた言葉を保育士さんが大切に受けとめ、さらに友だちと共有する機会を作ることで、言葉の幅が広がっていくのかもしれません。
5歳児
<活動内容:劇遊びの話し合い>
5歳児クラスでは発表会で劇遊びをすることに。
そこで劇の題材決め、配役決めのほか、劇に必要な道具を考えるための話し合いの機会を設けました。 5歳の子どもたちは会話でやりとりをし、自分とは違う意見を持つ子の話を最後まで聞き、スムーズに話しあいが進んでいる様子です。
子どもの「言葉による伝え合い」を育むためには、子どもの意見を尊重し、それぞれの思いを丁寧に汲みとる関わりをしていくことが大切なのではないでしょうか。
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10の姿「言葉による伝え合い」の観点を意識するポイント
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10の姿「言葉による伝え合い」の観点から、保育をするうえで意識したいポイントをまとめました。
子どもの言葉や表現を肯定する
保育士さんが子どもの言葉を受け止め、肯定的なリアクションをしていくことで子どもの「もっと話したい」という気持ちを育むことができるでしょう。
子どもの言葉を聞く際には、目線を合わせることや笑顔で相づちを打つことを意識できるとよいですね。
もし手が離せないときは、「先生は○○ちゃんのお話を聞きたいんだけど、今は~をしていてどうしても聞けないんだ 」と伝えたうえで、早いうちに話を聞く時間を作ることが大切です。
子どもは自分の言葉を聞いてもらうよろこびを知ることで「相手の話を聞こう」という態度が徐々に身についていくのかもしれません。
子ども同士の伝え合いをサポートする
保育士さんは、子どもたちがコミュニケーションをとる機会を支えていきましょう。
幼児期の終わりに向け、最初は1対1から始め、話し合いの経験を増やしていけるとよいですね。
なかには、話しあいの場面で意見が言えない子どももいるでしょう。
その場合は、保育士さんと1対1になれる場所を作り、思いを話せる環境を設けるとよいかもしれませんね。
絵本や紙芝居などを通して、さまざまな言葉に出会う機会を作る
保育士さんとのお話や、絵本、紙芝居などを通してたくさんの言葉に出会うことができれば、言葉の面白さや美しさを感じながら豊かな言語表現を身につけられるかもしれません。
保育のなかでは言葉遊びやオノマトペを使いながら、言葉の響きを楽しんでいけるとよいですね。
保育士さんが絵本を読み聞かせたりお話をしたりするときは、はっきりと発音するとともに、抑揚をつけた話し方をすると、子どもたちに言葉の面白さが伝わりやすくなりますよ。
「言葉による伝え合い」には、自分の言葉に自信を持てる保育を
今回は、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の一つ「言葉による伝え合い」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちを見つけるポイントをまとめました。
子どもたちの中には、言葉で伝えることが苦手な子や、みんなの前で意見を発表すると緊張してしまう子もいるでしょう。
そのような場合は、まずは保育士さんと1対1で、自分の意見を言葉で伝える経験を重ねるとよさそうです。
「面白いアイデアだね」「先生も同じくらい感動したよ!」など、その子の言葉を肯定的に受け止めるようにしましょう。
言葉で表現したことが周りの人に認めてもらえたという幼児期の経験は、小学校に就学してからも自信となり、胸を張って自分の思いを伝えられるようになっていくのではないでしょうか。
事例を参考に、10の姿の一つ「言葉による伝え合い」とは何かについて理解を深め、保育に活かしていきましょう。
保育所保育指針の重要ポイントとも言える「10の姿」について、それぞれの視点とエピソードを解説します。
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