保育所保育指針・幼稚園教育要領に示されている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。今回は、その10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちにつなげるポイントをまとめました。子どもたちが身近な自然や動植物と関わりながら成長していくために、保育士さんは何をすべきでしょうか。
hakase420 / stock.adobe.com
10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは
こども家庭庁・厚生労働省による「保育所保育指針解説」の資料では「自然との関わり・生命尊重」について以下のように示されています。
自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。
また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。出典:保育所保育指針解説/こども家庭庁より抜粋
戸外遊びの中で季節の自然にふれる機会は数多くあるでしょう。
遊びの中で自然物の面白さに気づくだけでなく、自然とどのように関わっていくかまで考えられるとよいかもしれませんね。
【年齢別】「自然との関わり・生命尊重」を実践した保育の具体例
10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」を育む実践事例をもとに、子どもの育ちや保育士さんの援助のあり方を考えてみましょう。
0歳児~1歳児
<活動内容:保育室の中で出会う自然>
自然物は植物や動物だけではありません。
0歳児クラスでは、保育園の中で感じることができる自然を大切にし、子どもたちに伝えています。
乳児期の子どもたちにとっては、身のまわりのあらゆる自然が新鮮な刺激となるかもしれません。
保育士さんが子どもと同じ目線に立ち、わかりやすい言葉で自然のよさを伝えていくことで、子どもたちも興味を持って楽しむことができそうです。
2歳児~3歳児
<活動内容:冬の日の戸外遊び>
ある寒い冬の朝の戸外遊び、水たまりが凍っているのを発見した3歳児の子どもたち。
身近な自然が持つ美しさや不思議さにふれることが、自然の変化に関心をもつきっかけとなるでしょう。
保育士さんはその季節ならではの体験を取り入れながら、子どもたちの興味に寄り添っていけるとよいですね。
4歳児~5歳児
<活動内容:生き物とのふれあい・飼育>
5歳児クラスが散歩に出かけた時、田んぼでカエルの卵を見つけました。
初めてカエルの卵を見た子は「ちょっと怖い」と言っておそるおそる眺めていましたが、家でお兄ちゃんがカエルを飼育していたというC君は「カエルの卵だ!おたまじゃくしが生まれるんだよ。 虫かごに入れて保育園で飼いたい」と興味津々です。
これは身近な生き物を発見し、飼育し、命との関わり方を考えることができた実践事例です。
生命の尊重について、言葉やお話で伝えていくことは難しいかもしれません。
保育士さんは、子どもが感じている生き物への愛着や親しみといった心の動きを汲み取り、見守りながら支えていくことが大切となりそうです。
0歳児~5歳児
<活動内容:季節の自然散歩>
3月の末、例年よりも少し早く桜が咲きました。
主任保育士のI先生は通勤途中に通る桜並木を子どもたちにも見せたいと思い、ミーティングで園長やクラス担任の保育士さんたちに相談しました。
自然にふれることができる場所は、保育園の外にあることが多いようです。
地域ならではの自然や動物に会える場所などを日常的に探し、どうしたら保育の中に取り入れることができるか考えていきたいですね。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
保育士資格を活かせる在宅ワークのお仕事特集!保育関係の自宅でできる仕事を徹底解説
保育士資格を活かせる在宅ワークにはどのような仕事があるのでしょうか。保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど自宅でできる仕事は意外に多いもの。今回は、保育士資格を活かして働ける在宅ワークの仕...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
「自然との関わり・生命尊重」の観点を意識するポイント
lalalululala / stock.adobe.com
10の姿「自然との関わり・生命尊重」の観点から、保育をするうえで意識したいポイントをまとめました。
さまざまな自然にふれる機会を作る
戸外や園の外にある自然を保育士さんが見つけ、子どもの気づきを促せるとよいですね。
保育士さん自身が自然の美しさや不思議さを感じ取り、豊かな表現で伝えていくことで子どもたちの情緒を育んでいけそうです。
その季節ならではの自然を見つけ、保育に取り入れていきましょう。
感じたことや考えたことを伝えあえるよう促す
子どもたちは実際に自然にふれ合ううちに、「ざらざらしてる」「冷たい」「なんか気持ち悪い」などさまざまなことを感じ取っているのではないでしょうか。
保育士さんは子どものつぶやきや率直な言葉を受けとめつつ、ほかの子どもと感想を分かちあえるように関係を仲立ちしていくとよさそうです。
命を大切にできるよう働きかけていく
絵本のお話などから命の大切さを実感することは、なかなか難しいかもしれません。
子ども自身が生き物とふれあって命の温かみや愛着を感じるうちに、大切に思う気持ちが自然と芽生えてくるのではないでしょうか。
時には生き物との関わり方を間違えてしまうこともあるかもしれませんが、子どもの心の動きに寄り添っていっしょに考えていくことが、命をいたわる姿勢につながっていくでしょう。
自然を大切にする心が「自然との関わり・生命尊重」につながる
今回は、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちを見つけるポイントをまとめました。
身のまわりの自然に触れ、美しさを感じたり、興味を持って調べたりする気持ちは、自然を守り大切にする姿勢の土台となります。
大人が「自然保護は大切なことですよ」と伝えるだけでは、その気持ちは育ちにくいでしょう。
手で触れ、目で見て、友達といっしょに豊かな経験をする中で、はじめて「この自然(命)を大切にすべき」と学んでいくのです。
乳児期にそよ風の心地よさを伝えることは、生命を尊重する姿勢の第一歩でもあるのです。
実践事例を参考に、10の姿の一つ「自然との関わり・生命尊重」とは何かについて理解を深め、保育に活かしていきましょう。
保育所保育指針の重要ポイントとも言える「10の姿」について、それぞれの視点とエピソードを解説しています。
保育士バンク!では、保育所保育指針の分かりやすい解説はもちろん、ほかにも現場で役立つ保育アイデアや保育士ならではの悩みなど、保育士さんが知りたい情報を発信しています。