子どもたちが「生まれてきてよかった」と思える心を育てる『グローバルキッズ』
Twitterで話題の男性保育士てぃ先生。
最も近い目標は、自分で保育園をつくること。
(てぃ先生が保育園をつくりたい理由はこちら)
「てぃ先生の園長見習い中」は、てぃ先生が実際に保育園を訪問し、
保育園を経営する先輩からヒントをもらう対談企画です。
今回は、業界の大手の株式会社グローバルキッズの中正雄一社長にお話を伺いました。
首都圏で118カ所の保育施設を運営する同社は、2016年に持株会社であるグローバルグループの株式を東証マザーズに上場。
創業からわずか10年というスピーディーな成長を遂げています。
今回は、グローバルキッズ飯田橋園の小松崎(※)園長を含め、グループ全体で行っている「子どもの未来をつくる」保育について語っていただきました。
(※崎は山へんに「立」と「可」です)
■話を聞く人
てぃ先生。Twitterフォロワー数40万を超える現役保育士。
Twitter原作のマンガ『てぃ先生』のほか、
書籍『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』『ハンバーガグー!』を刊行。
マンガのアニメも公開中!(タテアニメ)
https://twitter.com/_happyboy
■話を聞いた相手
株式会社グローバルキッズ 代表取締役 中正雄一さん。
製パン会社の社員として社会人のスタートを切る。その後、尊敬する上司が独立し保育事業を始めたことをきっかけに、後を追うように保育の世界へ。
保育園で3年間の経験を積み、2006年に独立。株式会社グローバルキッズを設立。
現在、首都圏を中心に保育園、学童保育、児童館を運営。自身も保育士試験を受け、保育士資格を持つ。
保育士は子どもと遊んでいるだけの仕事ではなかった
中正さん:大学卒業後、製パン会社の社員として勤務していました。
そこで最も尊敬していた上司が独立して、保育園をスタートされたことをきっかけに、僕も後を追うように保育の世界へ飛び込んだんです。
この業界に関わる前までは、保育士さんって子どもと遊んでいるだけの仕事かと思っていたけれど、実際に現場で働いてみて、とても尊い仕事であると分かりました。
3年間、保育現場や運営面の勉強をさせていただき、2006年に機会があって独立させてもらったんです。
そういった経緯で、グローバルキッズを運営しています。
保育の現場に立ったことで、この仕事の素晴らしさを知ったと語る中正さん。
今後、保育士たちの地位向上を狙った展開も考えているとのことです。
グローバルキッズで実際に働いている保育士の方々はどのような思いを持っているのでしょうか。
グローバルキッズ飯田橋園の園長を務める小松崎珠美さんにもお話を伺いました。
小松崎園長:グローバルキッズで 園長を務めて今年で11年目になります。
私はこの仕事を始めて、壁にぶつかっても大丈夫と思えるくらい、明るくなれました。
現在は孫ができたこともあり、次世代の子どもたちを育てる若手の保育士さんたちにも目を向けていく大切さを感じています。
経営層は保育士のサポート役
グローバルキッズ飯田橋園では、3歳児以上を対象に縦割り保育を実施しています。
同社では、地域性や子どもたちの姿、保護者のニーズなどを取り入れ、各園が工夫した保育を行っているそうです。
中正さん:私たちは、保育のやり方を制限していません。
経営層が保育のやり方を決めてしまうと、現場の先生たちのすばらしい能力が発揮できませんから。
商品を売る仕事だったらある程度統一したほうがいいけれど、保育園では現場の保育士たちに任せるのがいいと思うんです。
保育士たちがやりたいと思ったことを、サポートしていくのが経営者や本部の役割であると考えています。
てぃ先生:保育室の様子を見せていただいて、子どもたちがとても落ち着いていたので驚きました。
小松崎園長: 保育士同士が話し合えるように、時間をたくさん設けています。
お昼寝中に話し合ったり、クラスミーティングを行ったり。子どもたちのことや自分たちの保育について振り返るようにしています。
また、縦割り保育を取り入れていることで、先生たちが、
違った視点や角度で子どものことを捉えられるという良さもあります。
子どもの未来をつくる保育
てぃ先生:グローバルグループさんは2016年に株式上場されているとのことですが、事業が成功した理由は何だったのでしょうか。
中正さん:僕は製パン会社で店舗開発を担当していたこともあり、良い物件を見つけてパン屋を作るのが得意だったんです。
その経験をこの業界でも活かし、保育園の物件をうまく提案できたことが成功要因だったと思います。
物件が決まっても、そこで働く保育士が集まらないことが問題となっていますが、当グループの「子ども達の未来のために」という理念に共感し、
就職を希望してくださる方が多いですね。
てぃ先生:「子ども達の未来のために」とは、具体的にはどんなことですか?
中正さん:自己肯定感が高い子どもを育成することですね。いい大学やいい会社に入ることで肯定感を持つのではなく、自分が「生まれてきて良かった」と思ったり、育ててくれた人たちに感謝できることが大切ではないかと思うのです。
そのためには、現場で働く大人たちが自己肯定感を高めないといけません。自分たちが実践して見せて、将来はこんな人になりたいと子どもたちに思ってもらえる大人であるべきですね。
意見の不一致が起こっても、みんなで話し合おう
てぃ先生:保育士同士の人間関係についてはどうですか?
ベテランや、長くいる職員がいわゆる「お局」になってしまうと、
他の保育士の意見を聞き入れてくれなかったり、感情のぶつかり合いが起こったりしませんか。
小松崎園長: 保育士同士の気持ちがぶつかってしまうことはありますが、しっかり話し合いをしてもらい、解決できるように見守ります。
私が間に入って白黒つける事は簡単なのですが、納得できずモヤモヤしてしまう事もあると思います。
そうならないように「みんなで話し合いましょう」と投げかけるようにしています。
見通しの良いワンフロアで保育を行うメリットは、クラスを超えて連携した保育ができること。
小松崎園長:保育室が壁で仕切られていない施設ですので、クラスの連携は大切です。活動内容を変えたり、時間差をつけたりすることもあります。開園当初は運営方法の試行錯誤が続き、連携について悩み、職員会議を頻繁に実施した覚えがあります。
何度も話し合い、認識の統一と情報の共有をすることで次第に連携が取れるようになりました。
子どもたちも環境に慣れ、隣のクラスが歌っていると一緒に歌ったりしています。
また、何かあったときには保育士がすぐに隣のクラスに援助に入ることができる良さもあります。
てぃ先生:小松崎園長はこれまでに多くの保護者を見てこられたと思うのですが、
難しい要望を出されたり、子どもに対し過剰な心配をする保護者に対し、どのように関わっていますか。
小松崎園長:信頼関係を築くことが何よりも大切だと思います。
以前、「もっと厳しく育ててください!」と要望をいただいた事もありましたが、保護者との関係性がしっかりできていましたので、保育の内容や子どもの成長について話し、すぐに納得いただきました。私は毎日交わされる連絡帳から、保護者がどんなことを思っているのかを読み取り、お迎えの際に声掛けをして確認するように話を聞きます。子育て中の過程はいろんな事がありますからね。
先生に任せれば大丈夫、と思っていただけるような関係作りを目指していきたいですね。
みんなが憧れるプロ野球選手のような保育士を目指して
てぃ先生:中正さんが、園長先生と保育士にそれぞれ求めていることは、どんなことですか。
中正さん:園長に求めることは2つあります。
ひとつは、0歳から6歳までの保育を一通り分かっていること。
もうひとつは、チームのみんながこのリーダーの言うことなら何でも聞きたいと思うような資質です。
保育士に関しては、子どもが好きだということは当然ですが、成長意欲を持って仕事に臨んでほしいです。
時代が変わるとともに、子どもに対する適切なアプローチは変わっていきます。過去の経験や自分のやり方に凝り固まってしまうと成長できないので、吸収し変化できる人がいいですね。
てぃ先生:保育士たちのモチベーションを保つために工夫されていることがあれば教えてください。
中正さん:当社では、現場で保育を行うだけでなく、本部に来て現場の指導員を担当するトレーナー職のポストも用意しています。
保育士が経営者になり、世の中を動かすといった成功事例があまりないので、この業界は勿体無いなと思います。保育士たちが独立して経営者になってもいいと思うんです。
てぃ先生:たしかに、この業界にはプロ野球選手のように、目指したくなる姿がないんですよね。
僕は、あんな保育士さんになりたいと言われるようなモデルが増えていくと良いなと思っています。もちろん、自分もそれになれるように頑張ります。
中正さん:期待しています。時代の先駆者として、保育士たちを引っ張っていってほしいですね。
小松崎園長:保護者も子どもたちも「入りたい!」と思う、日本一の保育園を目指してください。
てぃ先生:はい、頑張ります。貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
てぃ先生の訪問日誌
保育環境について、「ワンフロア」と聞くと、各クラス同士の声や様子が、
子どもたちへ影響が出そうだと感じますが(実際開園当初は大変だったそうですが)、
見学させていただいたなかではそんな姿はなく、
全てのクラスの保育が繋がっているように感じました。
それは子どもだけではなく、職員も他のクラス(年齢)を知る機会にもなり、上手く機能していると思いました。
ありがとうございました。
プロフィール
てぃ先生:
関東の保育園に勤めるカリスマ保育士。
保育園の日常をつぶやくツイッターには40万人を超えるフォロワーがいる。
Twitter原作のマンガ『てぃ先生』のほか、
著書に『ハンバーガグー』『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』
(ともにベストセラーズ)など。マンガのアニメも公開中!(タテアニメ)
https://twitter.com/_happyboy