◆保育士が保護者と信頼関係を築く難しさ
保育士として勤務していると、必ずぶつかるのが保護者との意思疎通が上手くいかないという壁です。
特に新米保育士さんだと自分自身の子育ては未経験であることから、どうして保護者がそういう行動をとるのか、理解が及ばないことも。
そこで今回は、保育士が保護者と信頼関係を築くにはどうしたらいいのかを考えます。
鍵となるのは「言葉」。
保護者の方とのやり取りの中で一体どういった言葉がけをしていけばいいのかをまとめます。
◆保護者との信頼関係を築くポイント(1)保育士としての基本姿勢
まずは、保育士としての基本姿勢からおさえておきましょう。
保護者と信頼関係を築くために最低限おさえておきたいポイントをまとめます。
〇まずは第一印象から!
保育士にかぎらず、どんな職業でもどんな人間関係でも、第一印象は人との関係を決定づける大きな要素です。
保護者と初めて会う時に印象が悪くなってしまえば、その印象を消すのにとても苦労することになりますので、特に気を付ける必要があります。
まずは第一印象をより良くするために、努力を欠かさないようにしましょう。
人が第一印象を決める手がかりにするのは、「外見」「態度」「表情」「口調」の4つと言われています。
保護者に初めて会う時は、こちらの4点すべてを完璧に!ひとつでもダメなものがあればすべてが台無しになってしまいます。
〇連絡帳にマイナスなことは書かない!
保護者は、保育園での子どもの様子を、連絡帳に書いてもらうことをとても楽しみにしています。
連絡帳に子どもがすくすくと成長していることが伝わる楽しい様子が書かれていると、保護者は安心してくれますし、そのように面倒を見てくれている保育士に対しても満足感を抱きます。
逆に連絡帳に「今日は◯◯くんとけんかしてけがをしました」なんて書いてあるのに、保護者のお迎えの時にはたまたま時間が取れず、けんかのことを伝えられなかったらどうでしょう?保護者からすれば、「こんなことを、連絡帳にだけ書くなんて!」という気持ちになる…というのは容易に想像できませんか?
書く内容によっては、保護者から不信の目で見られてしまうかも。
マイナスなことは書かない方が無難です。
〇小さなコミュニケーションでも欠かさずに!
連絡帳にマイナスなことを書けないのならば、お迎えの時の時間に、口頭で伝えればいいのです。
短い時間ゆえ、あまり長々とお話できないとは思いますが、その情報さえあれば、保護者は家に帰ってから子どもとじっくり話し合う時間を持てますから。
子どものことで、保護者に伝えたい「困ったこと」は、必ず直接伝えましょう。
こういった小さなコミュニケーションで、保護者は保育士により一層の信頼を寄せてくれるようになります。
マイナスなことがない日なら、その日の子どもの楽しい様子を、どんなに些細なことでもいいので、知らせてあげましょう。
「こんなにちょっとした行動も見てくれているんだ!」と、少しずつ信頼してくれるようになりますよ!保護者に保育園での様子をしっかりと伝えるということは、保護者からすればとてもありがたいことなのですから。
◆保護者との信頼関係を築くポイント(2)保護者には感謝の言葉を伝えよう
それでは次に、保護者と対面する時、具体的にどんな点に気を付けていけばいいのかを考えていきます。
ここで鍵となるのは「感謝の言葉」です。
人は感謝されると謙虚な気持ちになるものです。
保護者だって例外ではありません。
人の心理を大いに利用し、保護者からの印象を良くするのが魔法の言葉=「感謝の言葉」なんです。
〇人は感謝された人に対して好感を持つ
人は「ありがとう」と言われると無条件にうれしくなるものですよね。
自分に感謝をしてくれた人に対して、好感を持ちますし、自分もその人に対して謙虚な気持ちが持てるようになります。
人は小さな子どもからでも「ありがとう」の感謝の言葉を言われたら、その子に対してもっと何かをしてあげたいと思うものなのです。
〇感謝の言葉をどこかに入れましょう
お知らせのプリントや園の便り、告知板など、保護者に読んでもらいたいものには、どこかに「ありがとう」の5文字があるだけで大きな違いを与えるものです。
そこに書かれたことを最後まで読んでもらえるか、しっかり守ってもらえるかどうかにまで影響します。
ですので、保護者に読んでもらうものには、感謝の気持ちを表す文言を入れるようにしましょう。
たとえば、今日の遠足の様子を伝えるプリントだったら、「朝早くから、お弁当の作りなどのご協力ありがとうございました」というねぎらいの言葉や「みなさんが集合時間を守ってくださったおかげで・・・」といったひと言を入れてみましょう。
その言葉があるだけで、保護者も「こちらこそありがとうございます」と引率してくれた先生への感謝の気持ちが起こるものなのです。
〇実際に保護者と対面する場面でも感謝の言葉を伝えること!
体面上だけではなく、実際に保護者に感謝すべきことはたくさんあるかと思います。
そのため、日ごろから保護者に感謝の気持ちをしっかり伝えておくことも大事ですね。
懇親会などでも、「いつもご協力ありがとうございます」と最初に先生からの言葉があるのとないのでは、そのあとに続く言葉の受け止め方は保護者にとってずいぶん変わってきます。
保育士から「ありがとう」の言葉を言われると保護者も恐縮し、「こちらこそ」という謙虚な気持ちになってくれるものですよ。
◆【上級編】保護者との信頼関係を築くポイント(3)言葉がけ事例集
最後に、保護者からより深く信頼してもらうために、ちょっと上級編の言葉がけ事例を掲載します。
子育てに迷わないお母さんなんていません。
毎日の子育ての中でイライラしたり、落ち込んだり・・・。
上手くできないことで自分を責めてしまい、自己嫌悪に陥るお母さんがたくさんいます。
大変な毎日の中で、こんな言葉に救われた、この言葉があったから頑張れた、そんな言葉を集めてみました。
〇「小さい時は、家事も半分、育児も半分でいいの。ごはんなんかは、もう、食べていければいいかなっていうくらい。」
初めての育児で疲労が溜まりに溜まっていた時期の検診の際に、助産師さんからかけてもらった言葉だそうです。
力の抜き方がわからず、お母さんたちはついつい頑張りすぎちゃいますが、「子どもが小さいのだから家事も育児も半分でいい」という助産師さんならではの深い言葉ですね。
この言葉を機に、完璧を求めることが少なくなり、ちょっとずつ手を抜いていくことを覚えたそうです。
〇「子どももなんで自分が泣いているのかわかないのよ。産まれて始めてのことばかりで子どもだって必死なのよ。
一緒に頑張りなさい。」
子どもの夜泣きがひどく、全然寝れない日々が続いていた頃、実の母に「なんで泣いているのかが全然わからない」と弱音を吐いた時に言われた言葉だそうです。
子どものことをわかってあげられないのは母親失格と思ってしまっていた肩の力が抜け、子どもと一緒に自分も成長するのだ、という気持ちを持てたたようです。
〇「泣いている間は生きているから大丈夫!死んでなきゃいいのよ!」
夫が単身赴任になり、ほとんど一人で子育てをしていた方のお話です。
とにかくよく泣く子どもでこっちが泣きたいよといつも思っていたそうです。
そんな様子を見ていた幼稚園のベテラン先生からかけてもらった言葉。
ベテラン先生にあっけらかんと言われたことでつい笑ってしまい、とても楽になったそうです。
確かに出産後は元気に生まれてきてくれたことだけで幸せと思っていたのに、その気持ちを忘れかけていたなと気づいたそうです。
〇「ママに花丸あげる。ママは頑張っているよ。エライエライ」
これは2人の子どもの育児に疲れ、日々イライラでノイローゼ気味だったお母さんが子どもたちの前で泣いてしまった時に、まだ2歳の女の子からかけてもらった言葉だそうです。
頭をなでなでしながらそう言ってくれた娘さんに、さらに大号泣してしまったとのことです。
お母さんが頑張っているのは、子どもが一番見ているのですよね。
こんな言葉をかけられる優しい子どもに育っているのが、まさにお母さんが頑張っている証拠ですよね。
◆保育士が保護者からの信頼を得ることはとても大切
以上、保育士が保護者との信頼関係を築く上で大切なポイントをまとめました。
最後の上級編は、確かに心に響く言葉ではありますが、状況によって使い分けてくださいね。
まだ若い新米保育士さんからの言葉がけにしてはちょっと…というものもありますので。
どうしても使いたい場合は、「先輩保育士の〇〇先生がこう言っていました」など不自然にならない形で使用してみてください。
保育士が保護者からの信頼を得ることは、園の運営がスムーズにいくかいかないかという点でもとても大切ですし、園に通ってくれている子どもたちの健やかな成長のためにもとても重要です。
子どもたちにしてみれば、自分のお母さんやお父さんが、保育士のことを心から信頼している状況ならば安心して毎日の園生活を送れますよね。
毎日の激務でヘトヘトになっている保育士さんも多いかと思いますが、ぜひ、保護者とのコミュニケーションをしっかりととって、理想の保育を目指して頑張ってくださいね。