◆知っておこう!子ども・子育て関連3法案とは?
国は子ども・子育てシステムを厚労省・文科省という二元体制から一元化すべく大きく舵を切りました。
それが2012年8月に可決された『子ども・子育て関連3法案』です。この法案が成立したことにより、2015年度以降保育に関する諸規定が変更されることになりました。
そこで今回は同法案によって変更されるポイントと変更されなかったポイントをそれぞれ見ていきたいと思います。
◆法案によって変更されるポイント
◯認可保育所の保育士の配置基準
特段の変更はありませんでしたが、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成24 年4月1日施行) により、「従うべき基準」として位置付けられました。
◯認可保育所の面積基準
特段の変更はありませんでしたが、「地域の自主性及び自立性を高めるための 改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成24 年4月1日施行)により、「従うべき基準」として位置付けられました。ただし、平成27 年3 月31 日までは、原則「従うべき基準」とされながらも、「待機児童問題が深刻でかつ地価の高い地域」に限っては「標準」とされ、合理的な理由があれば地域の実情に応じた異なる内容を定められるものとされました。
◯施設整備費補助(3/4 補助)対象
【児童福祉法第56 条の2 】では「 社会福祉法人等のみが補助の対象であり、株式会社は補助の対象外」でしたが、法改正により、主体の区別なく、施設の減価償却費の一定割合相当分をサービスの対価としての給付費に組み込むことにより対応予定とのことです。
◯社会福祉法人会計の適用
【局長通達】では「株式会社には企業会計の他社会福祉法人会計の適用あり」とされてきましたが、平成24 年4月より、施設(事業所)ごとの企業会計基準による財務書面(貸借対照表、借入金明細表等)の提出によって代えることができるようになりました。
◯避難用外階段設置義務
【児童福祉法最低基準(省令)】の「建物の2階以上の施設には、避難用の外階段等の設置の義務付け」という規定から特段の変更はありませんでしたが、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成24 年4月1日施行)により、「参酌基準」として位置付けられることになりました。
◯幼保一体化
「認定こども園は内閣府、幼稚園は文科省、保育園は厚労省がそれぞれ所管」となっていましたが、法改正後は「幼保連携型認定こども園の認可・指導監督を内閣府に一元化」「認定こども園・幼稚園・保育所等への給付を内閣府に一元化」「認定こども園・幼稚園・保育所等を通じた一元的な窓口の設置」へと変更されます。
◯保育所の設置認可
【児童福祉法第35 条第4項】として、都道府県等は地域の保育需要が満たされていない場合には、適格性・認可基準を満たしている保育所等であれば、原則認可することとされました。
◯契約方式
保育契約について、私立保育所(社福・株式会社等)は利用者及び市町村間の契約のままで変更はありませんでしたが、私立保育所以外の保育所(公立保育所)は利用者及び保育施設間の直接契約に変更されました。
◯認可保育所の入所基準
【児童福祉法第24 条第1項、法施行令第27 条】において、保育所に入所するためには、児童の保護者のいずれもが「昼間労働することを状態としている」場合等である必要があり(いわゆる「保育に欠ける」要件)、市町村が住民のニーズ調査及び保育を必要とする全ての子どもの必要性を認定することとになりました。
◯家庭的保育者(保育ママ)の資格要件
【児童福祉法第6条の2第9項、同法施行規則第1条の32】により、平成22年より保育士、看護師等の資格の有無を問わず、必要な研修により保育ママとなることができるようになりました。
◆法案によって特に変更されないポイント
◯保育所の運営費の使途制限
【局長通達】の「同一設置者が設置する他の保育所への運営費の使用を制限」から特段の変更はありませんでした。
◯事実上の配当制限
【局長通達】「法的には禁止されていないが、配当を行うと運営費補助金への『民間施設給与等 改善費加算措置』(運営費補助の上乗せ)の適用なし」の規定から特段の変更はありませんでした。
◯不動産賃借の場合の安定的資金保有義務
【局長通達】「株式会社が賃貸物件で保育所を経営する場合、1年分の賃料相当額及び1000 万円 の換金性の高い状態での保有義務付け」の規定から特段の変更はありませんでした。
◯保育士勤続年数基準
【局長通知】「民間施設給与等改善費の加算率は、保育士の勤続年数の平均に基づいて決定されるが、認可外保育施設における勤続年数が算定対象とならない」という規定から特段の変更はありませんでした。
◯保育士常勤基準
【局長通知】の「1日6時間以上かつ月20 日以上勤務しなければ、常勤の保育士とみなされないため、民間施設給与等改善費等の算定対象とならない」という規定から特段の変更はありませんでした。
◯給食の外部搬入方式
【児童福祉法最低基準(省令)】の「自園調理施設があれば3歳以上の給食は外部搬入可能」「3歳未満は外部搬入不可」という規定に変更はありませんでした。
◯保育士試験受験資格要件
【児童福祉法施行規則6条の9】の「試験は年1回、高等学校卒業者については、認可保育所での実務経験が2年以上必要などの資格要件あり」という規定に変更はありませんでした。
◯施設長の資格要件
【各自治体の保育所設置要綱】において施設長の要件を定めていますが、特に変更はありませんでした。
◆市場メカニズムの積極的活用を
「保育の質」を保つ以上、保育士や保育園の設置に基準が必要なのは当然のことです。
しかし、あまりにも厳格な規制を設けることによって、保育園が不足してしまっては子どものためになりません。
ニーズがあるところに、サービスの提供者が現れるのが市場メカニズムです。この市場メカニズムを積極的に活用し、保育ニーズを十分に満たし、女性が活躍できる社会づくりをしてもらいたいと思います。