保育所保育指針・幼稚園教育要領に示されている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。今回は、その10の姿の一つ「豊かな感性と表現」について解説します。豊かな感性と表現の意味、遊びの実践事例を保育士の視点でまとめました。子どもたちが経験から感じたことを豊かに表現するためには、保育士さんはどのように関わるべきでしょうか。
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10の姿の一つ「豊かな感性と表現」とは
こども家庭庁・厚生労働省による「保育所保育指針解説」の資料では、「豊かな感性と表現」について以下のように示されています。
心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。
出典:保育所保育指針解説/こども家庭庁より抜粋
その子らしい表現方法を育てるためには、まずは一人ひとりの「感じ方」に向き合い、認めていくことが大切です。
体験したことを言葉や絵、体の動きなどでのびのびと表現しながら、保育士さんや他の友だちとの関わりを通して、表現の喜びや楽しさを感じられるとよいですね。
【年齢別】保育で「豊かな感性と表現」を実践した具体例
10の姿の一つ「豊かな感性と表現」を育む実践事例をもとに、子どもの育ちや保育士さんの援助のあり方を考えてみましょう。
2歳児~3歳児
子どもの表現する絵や作品を見ていると、保育士さんは「もっといろんな色を使ってくれたらいいのに」「それでおしまいなの?」とやきもきしてしまうことがあるかもしれません。
子どもの表現への関わり方について、以下の実践事例から考えてみましょう。
<活動内容:こいのぼりの作品製作>
保育園では、月ごとにテーマを決めて製作を行います。
5月のテーマは「こいのぼり」。
この春からクレヨンを使ったお絵描きを始めた2歳児クラスは、保育士さんが切り取ったこいのぼり型の画用紙に好きな色を塗り、空色の画用紙に貼るという手法で製作を行なうことにしました。
担任のM先生は2年目の若手保育士さん。
かわいいこいのぼりの作品が飾られた壁面を想像しながら、子どもたちにこいのぼりの絵本を読んだり、歌を教えたりしました。
「製作後記」を飾ることで、子どもの個性や思いを汲み取ることができたようです。
のびのびと表現し、それを認めてもらうことが意欲につながるのかもしれませんね。
3歳児~4歳児
毎日の保育の中にも、子どもが表現を楽しめる工夫はできそうです。
4歳児の給食参観での実践事例をみていきましょう。
<活動内容:給食参観での盛り付け>
年に一度の給食参観は、保護者もいっしょにテーブルを囲んで給食を食べることができる日です。
参観日のメニューはカレーライス。
トッピング用に、お花型にくりぬいた茹で野菜やチーズなどが用意されていました。
製作や音楽などの活動以外にも、毎日の保育の中に表現を楽しめる機会はさまざまありそうです。
担任の保育士さんだけではなく、給食の先生などをまじえた園全体で協力して、子どもの活動の幅を広げる工夫ができるとよいですね。
4歳児~5歳児
音楽や楽器を取り入れた表現遊びの援助に苦戦する保育士さんもいるかもしれません。
子どもとの関わり方について、実践事例をもとに考えてみましょう。
<活動内容:音楽遊び>
おはなし「3匹のこぶた」の劇ごっこを楽しむ5歳児クラス。
劇をする中で、保育士さんは「子どもたちの劇に音がついたら面白いのではないか」と考えました。
子どもといっしょに劇の内容にぴったりな音を考えていきます。
音楽を使って物語を表現することで、子どもの発想が豊かに引き出せた事例です。
普段の保育のなかでさまざまな楽器に親しんでいたことが、楽器の持つ雰囲気や特徴を劇ごっこに活かそうという意識につながったのかもしれません。
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「豊かな感性と表現」を意識するときのポイント
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10の姿「豊かな感性と表現」の観点から、保育をするうえで意識したいポイントをまとめました。
子どもの表現を大切にする
子ども自身が思い思いに表現する楽しさを大切にしていくことが、豊かな感性や表現の楽しさを味わううえで重要となるでしょう。
子どもが心の中で感じたことを自由な発想で表現するうちに、表現方法や素材を工夫することの面白さに気づき、表現の幅を膨らませることにつながるかもしれませんね。
イメージを膨らませられるようさまざまな素材や道具を用意する
保育士さんは、多様な表現技法や道具を使う経験ができるように環境を整えましょう。
たとえば音楽遊びでは、さまざまな楽器から選べるようにする、子どものイメージを実現させる楽器の鳴らし方をアドバイスするといった援助が挙げられます。
子どもがさまざまな素材や道具にふれながら表現するうちに、豊かなイメージやアイデアが浮かんでくる機会を作れるとよいかもしれませんね。
友だちの表現にふれられる機会を作る
子ども同士がお互いの表現にふれ合えると、さらにそれぞれの表現が発展していきそうです。
そのためには、保育士さんが主導しながら協同して何かを作る活動を取り入れたり、それぞれの表現のよさを伝えて共有したりといった援助をするとよいでしょう。
友だち同士でお互いの表現を認め合い、取り入れ合いながら新たな表現を生み出していけるとよいですね。
心の中で感じたことを表す活動が「豊かな感性と表現」に
今回は、幼児期に育ってほしい10の姿の一つ「豊かな感性と表現」とは何か、保育で取り入れる際の実践事例をもとにしながら保育士の視点でまとめました。
「表現」とは、歌や劇の発表だけではありません。
日々の保育の中で子どもたちが感動する体験を通して、思わず言葉が出たり、体が動いてしまったりすること自体が「表現」と言えるでしょう。
保育現場では、つい運動会や音楽会などの行事に向けた「見せるための表現」を作り上げることに必死になりがちです。
しかし、一番大切なのは「子どもたちが楽しく表現をしている」ということです。
保育士さんが教えた通りの絵画を描くのではなく、心の中で感じたことがその作品の中に表れているか、というところを見ていけるとよいですね。
今回紹介した実践事例を参考に、10の姿の一つ「豊かな感性と表現」とは何かについて理解を深め、保育に活かしていきましょう。
保育所保育指針の重要ポイントとも言える「10の姿」について、それぞれの視点とエピソードを解説しています。
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